らくだの涙、らくだの涙 ドキュメンタリー映画。「行列のできる法律相談所」で

らくだの涙
ドキュメンタリー映画。「行列のできる法律相談所」で紹介

ミュンヘン映像映画大学に通うモンゴルとイタリア出身の2人の監督による卒業制作。らくだの親子の絆をめぐる心温まるドキュメンタリー。子供に愛情を持てない母らくだの心を癒そうと、馬頭琴を奏でる音楽療法を試みるモンゴルの遊牧民族。彼らの素朴な生活と、人間と動物の距離感、そしてラストで母らくだが見せる思いがけない表情など、都会に住む人間には驚きと不思議に満ちたドラマが展開。

青く澄みきった高い空と、どこまでも続くモンゴルの大地。この広大な大自然の中に、ある遊牧民族の家族が暮らしていた。曾祖父ちゃん、曾祖母ちゃんから、お祖父ちゃん、お祖母ちゃん、お父さん、お母さん、そして子供たちという愛情たっぷりの四世代の大家族。容赦なく砂嵐が吹きつけるゴビ砂漠で、今も変わらない伝統的な遊牧生活を続ける彼らにとって、一緒に暮らすひつじ、山羊、らくだたちも大切な家族の一員だ。季節は春を迎え、らくだの群れにもかわいい子らくだが生まれた。しかし、群れから離れるように生きている一頭のらくだは、難産の末、一家のお父さん、お母さんの助けを借りて白い子らくだを産み落とす。ところが、赤ん坊らくだは母親からお乳をもらえず、子育てを拒否されてしまう。このままでは子らくだは死んでしまう。一家は何とか母らくだが子らくだにお乳を与えるように仕向けるが、母らくだは顔をそむけるばかりか、子らくだに噛み付く始末。仕方なく、母らくだの乳から搾ったミルクを、哺乳瓶に詰めて赤ん坊らくだに授ける家族でしたが、どうにか知恵を絞って、いつの間にかすさんでしまった母らくだの心を癒すため、県庁の街から音楽家を連れてくることにする。そのメッセンジャーを務めるのは、小さなふたりの息子たち。街にやってきた幼い兄弟は、テレビやゲームなど、都会生活の見るものすべてがものめずらしく、興味深いものだったが、しっかりもののお兄ちゃん、そして笑顔がかわいい弟は、何とか一家の言いつけを守って、音楽家を呼び寄せることができた。家族全員が見守る中、遠い街からはるばるやってきた音楽家は、持参した馬頭琴で甘く優しいメロディを奏でる。心を癒す優しいメロディにあわせて、一家のお母さんが美しい歌声で歌いだした。すると不思議なことに、母らくだはぽろぽろと大粒の涙を流し始めた。...